今日までちょこちょこ、「多様性の科学」を読んでいた。
今年読んだ本の中でも、トップクラスに面白いノンフィクションだってことは間違いないので、感想を書いておく。
失敗の科学も面白かったけど、それ以上かも。
この本では、「多様性」が問題解決に果たす意義を説明してくれる。
ただ、この本で言われている「多様性」は、よく言われているような多様性−−例えば肌の色、性別、宗教における多様性−−だけではない。
この本は、考え方の多様性(本書では「認知的多様性」と呼ばれる)がいかに重要なのかを語る本だ。
同じようにものごとを考える同質的な集団の中では、問題解決に必要な視点も画一的になる。その結果として重大なサインを見逃してしまったり、さらに悪いことに「自分たちには多様な視点が欠けている」ということに気づかなかったりする(自分や自分たちのいる集団を振り返ることがどれだけ難しいか、わかるはずだ)。
本書ではさまざまな事例や研究を引き合いに出しながら、考え方の多様性が人類(ホモ・サピエンス)にとってどれだけ重要であるかを説明しつづける。
この本の好きなところはいろいろある。
まず「考え方の多様性」というコンセプトは、シンプルに筋が通っているが、なかなか気づかなかった。
たしかに、考え方の異なる人たちが自由に意見を出し合える環境であれば、問題解決にあたってもより多くの(自分では気付けない)オプションを検討することができる。
そうしたオプションを踏まえて意思決定することができれば、正解のない問題に対して、よりよい意思決定ができる可能性も高まる。
……ということで、この考え方じたいが気に入った。
ただ単に多様な肌の色、宗教、性別の人をメンバーに入れるのではなくて、考え方の異なる人々でチームを構成するべきだ、というのは……それはそう(もちろん、いろんなバックグラウンドを持った人がチームにいれば、違う考え方をしている蓋然性も高まるけど)。
それに、この本には、考え方の多様性を推し進めていく上で障害になりそうな点について述べているところも好きだ。
例えば、上でサラッと「考え方の異なる人たちが自由に意見を出し合える環境であれば」などと書いたが、それを実現するのは難しいのでは? と思わないだろうか。
多様な考え方をする人がたくさんいるチームだととしても、
- その考えを口に出してもらうこと
- 口に出された意見からどれか1つ(もしくはミックス)を選び、実行すること
のように、悩ましいポイントはまだまだある。
そこについても筆者はある程度カバーしている。
チームの中で自分の意見を発信してもらうためにどんなポイントが大切なのだろうか、とか。
個人的にはもう少し意思決定の方にも触れてほしかったけど、それよりもエコーチェンバー現象のように、誰かが口に出した意見を尊重できなくなるという問題のほうが現代においては重大な問題だと思うので、この本の分量については納得している。
エコーチェンバーの中に自分がいるのではないか? というチェックリストは本当に即効で便利だし、この部分だけでもすごく価値がある。
「多様性」の大切さをこうやって述べている本は、自分が読んできた中で唯一無二だ。本当に面白い本だったので、読んでみてほしい。
多様性を活かすには、相互信頼が必要なんだよなーというのを教えてくれる、もう1つの本↓