この間、新文芸坐でこれを見た
五・一五事件のちょっと前から二・二六事件まで、ざっくり言えば1930年代の日本陸軍を舞台にした映画だ。ただメインのストーリーは(宮城大尉が決起に参加する)二・二六事件ではなく、主人公の宮城大尉とそのパートナーの薫さんのラブストーリーになっている。
だからこの映画は、まっっっっっったく現実を反映していない。映画のラストで「この映画はフィクションです」とわざわざ書いているけど、この映画に関しては本当にフィクションばかりなので、この映画で描いてあることを真実だなどと決して思ってはいけない。
という、その1点をどう評価するのかで、この映画への評価は分かれるだろう。個人的には、ラブストーリーとしてみる分には面白かった。ただ、この作品は大嫌いだ!
ラブストーリーとして面白かったというのは、吉永小百合が演じる薫さんの抱える葛藤を、段階的に解決していくところかな。薫さんは芸者、まあ言ってしまえば遊女みたいな存在なんだけど、そこからいろいろあって宮城に拾われて、そこから2人の関係性が進んでいく。
身体の傷、心の傷、いろいろ抱えてしまった薫さんの傷をひとつずつ解消していったんは、スローテンポではあったけど、心地よかった。
あと、この過程自体には、いっさい宮城大尉の
個人的に印象に残ったシーンは2つある。1つめは、宮城大尉が、朝鮮で上司か同僚がが行っている(?)物資横流しの証拠を掴み、それを告訴しようとしたシーン。
同僚が、芸者(これが薫さん)の命と引き換えに宮城大尉の告訴状を取り下げさせようとしていたのだけど、普通こんなのありえないでしょ。芸者1人の命で陸軍物資の横領を相殺しようとするのは、さすがに頭が悪すぎる。
ただまあ、昭和陸軍ならあるいは……と思ってしまう程度には、私の陸軍に対する評価は低いのだけど。なんというか、まあ、わけのわからないロジカルさをこのシーンから感じて、ゾッとした。
個人的に印象に残ったシーン2つめは、宮城大尉が毒殺されかかった後、昏睡状態から回復するシーン。めっちゃ長回しというか、1カットが長かった。
この映画は全体的に、1カット1カットが長いな〜と思うシーンが多かったけど、このシーンは特にそう感じた。まあ、高倉健や吉永小百合といった人たちの演技をじっくり見れるので、個人的には好きな組み立てだった。
まあ、そのぶん上映時間は膨らんじゃうんだけど(2時間半くらい上映してたと思う)。
それにしても、吉永小百合ってこの頃から吉永小百合の声がしてビビった。