シャツとソックスの日記

@shatsutosokks の日記帳です。

「狭き門」を読んだ

今日はアンドレ・ジッドの書いた、「狭き門」を読んだ。ネタバレあり。
 
とっても面白い小説だった。
 
主人公のジェローム(僕)は、従姉妹のアリサをあるきっかけから愛するようになる。2人は側から見ると相思相愛なのだが、婚約となるとアリサは首を縦に振らない。そうして時間が過ぎていくうちに、2人の関係性も変わっていく……というのが、だいたいの話の筋だ。
 
個人的に、アリサのキャラクターと小説の構成が特に良かったと思う。
どういうことかというと、私はこのアリサというキャラクターが大嫌いで、そうなったのは作者のジッドがうまくやったからに他ならない、ということ。
 
アリサは、徹底的にジェロームを選んでいない。だからこの2人ってほんとうに愛し合ってるんですか? と思ってしまう。
 
それに、アリサの他責な部分というか、みずからの行為の価値を低く見積もっているところは特に大嫌いだ。信仰を逃げ場所に使っているだけで、本当は自分もジェロームも怖いだけなんじゃないか。私は別の宗教を信じているけど、信仰は本来、自分を強くしてくれるものだと思う。
アリサはこういう人(だと私は思う)なので、ある場面で、(たしか)あの時、あなた(ジェローム)がわたしに触れてくれたら……みたいなことを言っていたと記憶しているが、正直触れていたら触れていたで拒絶していたんじゃないの? と穿った見方をしてしまう。あと、ジェロームのもとを去って日記を遺していくのは、ほんとうにやっていることがカスすぎる。
 
とまあ、こんなふうに私はアリサのことが大嫌いなのだが、それはひとえに、ジッドがそういうふうにこの小説を構成したからだ。
小説の中では2人が長い間物理的に離れていたこともあって、読者はジェロームといっしょにアリサからくる手紙を読むことになるわけだが、それはジェロームと読者を同じ気持ちにさせる効果というか、読者を引き込んでいくようにできている。こうした構成はうまいなーいいなーという気持ちになる。
 
最近よくこの時代のフランスの小説を読むんだけど、古典新訳文庫に入っているような作品はどれも面白い。次は何を読もうかなー