- 「日本」という領域の中や外を繋いでいる、海の道についてもっと研究するべきだ
- 「百姓」は農民という常識を捨て、もっと多様な職業集団がいたことに着目するべきだ
といったものにまとめられると思う。
で、この本が面白かったのか、つまらなかったのかというと……面白かった。
でも、私は歴史学の本に面白さを求めていない! むしろ、そういった面白い記述を読むたびに、怪しい……と思ってしまう。
網野さんがこの本で言っている内容は、これまでの歴史学の常識に対して挑戦するものだ(と、自分で言っている)。そしてその内容を伝える言い方はかなり痛快だから、読んでいると面白い。だから惹きこまれるし、「なるほど! そうなのか!」とうっかり説得されてしまいそうになる。
ただ、そうやって歴史を面白いストーリーとして提示してくる人間には警戒するべきだ、と私は思う。今までよくできたストーリーに何回もネットで騙されてきたので。
この本の中で網野さんがしている主張を支える根拠はたしかに資料に基づいているものもあるが、「〜であろうと私は思っています」スタイルの、特に検証はしていないがアナロジーを適用するものもある。それは学問としていかがなものか。そういうアナロジーが成立するのか史料と統計にあたるのが、歴史学者の仕事ではないでしょうか。
そういうふうに考えているので、この本は面白いが怪しい、みたいな評価になる。もちろん、私はこの本しか網野さんの著作を読んだことはないので、これをもって網野さんが怪しい歴史学者だ、というつもりはない。でも少なくとも、私にはこの本を無批判に受け入れることはできない。
網野さんが言っていることが日本の歴史学や歴史好きにどれくらいの影響を与えているのかは知らないが、たぶん網野さんの言っていることを批判するような論もあるはずだし、次はそういう本や論文を読んでみたいなあ。
と思って調べてたら、サクッとそういうタイトルの本を見つけた。図書館とか行ったら読めるかなあ(最近、なかなか以前みたいに本が買えなくなってきたので……)。