今日はこの本を読んだ。
奈良時代……というよりもう少し広い範囲、具体的には天武天皇の退場から持統天皇の登場のあたり(西暦で680年くらい)から平安京への遷都までの政治史を取り扱った本だ。
この時代は天武天皇の血筋が天皇として続いていたわけだが、その中でいかにドロドロの権力闘争が行われていたのか……というのが、この本ではたっぷりと書かれている。
正直、私はこの時代のことを全然知らない。「白鴎・天平文化」と言われるような仏教系の芸術や東大寺といったところも、奈良に行ったよーって日記に書いた時に初めて見たくらいだし。
だからこの本が学術的にどうだ、みたいなことは言いづらいのだけど、面白い読み物だったと思う。
なんというか、著者はこの時代のことが本当に好きなんだろうなあ、というのが伝わってくる文章だった。オタクが書いている文章みたいというか。
奈良時代は聖武天皇と孝謙天皇(称徳天皇)の時代だった、という著者の主張が確からしいかはさておく(よく知らないので)。
が、そう見ると、ただ歴史の年表や教科書でさらっと読んだ内容の行間で、こんな人たちが活動していたんだ……という著者の語りは本当に読んでいて面白かった。
そういう文章はなかなか私には書けないので、ちょっとうらやましい。
特に印象に残ったのは、孝謙天皇に関して。孝謙天皇は2回天皇になっていて呼び方をどうするのがよいか悩むが、とりあえずこの名前で統一して書いておく。
孝謙天皇に関しては低い評価が下されているけれど、個人的にはなぜ孝謙天皇がああいう行動をとったんだろう? というのを考えてみるのが楽しかった。
例えば、この本によると、孝謙天皇は自身を政治の表舞台に出す最初の大勝負に勝った。奇襲(物理)をした結果、それまで政治を主導していた藤原仲麻呂(恵美押勝)とその与党を追い落とすことに成功した。
しかし、そうした賭けに勝っても、孝謙天皇は自身の政治をフォローしてくれる既存の勢力の獲得……というかぶっちゃけると藤原氏の協力は得られなかったようだ。どうして得られなかったんだろう? とか、そこに現れる道鏡とか、そういうことを想像するのが、とにかく楽しい。
そういうことが好きな歴史オタクにはちょっとおすすめできる本かな。
この本は参考文献も新書判で5ページくらいと結構充実しているので、次はそこにある本を読んでみようかなあ。