アニメスタイルの小黒編集長がお勧めしていたので、今日はサイボーグ009の第16話「太平洋の亡霊」を見た(個人的には15話「悲劇の獣人」もかなり重いテーマでびっくりした)。
【 #アニメ様のお勧めアニメ 】『サイボーグ009』(68年)が期間限定で配信中。16話「太平洋の亡霊」はアニメ史に残る異色作にして超意欲作。テーマとそれに対するアプローチにも驚くが、何よりも物語を語るパワーが凄い。過激な内容でありつつ、作り手には一片の迷いもない。https://t.co/Bo9qBwFEPe
— 小黒祐一郎 (@animesama) August 23, 2024
これは本当にすごいアニメだ。
ぜひ見てほしい。
旧日本海軍の連合艦隊が突如復活し、真珠湾を奇襲する。海の底から軍艦や戦闘機が復活し、アメリカ軍の兵器や基地を破壊していく。この復活した兵器たちにはどんな攻撃も効いていない。
そして連合艦隊の旗艦として活躍し、戦後はアメリカ軍の核実験の標的としてビキニ環礁に沈んだ長門が、放射能とともにアメリカ西海岸を襲おうとする……という話。
この回を見ていると話の筋が、とか、リアリティが、とか、そういう普段アニメ視聴時に考えてしまうことは、もはやどうでもよくなる。ただただこの話が言いたいことと、それを支える演出に圧倒される。
そういう意味では今年1の作品かもしれない(おそらくこのまま年間ベストになるだろう)。
個人的に印象に残ったシーンは2つ。ベタだけど。
1つめはゲン一佐と平の亡霊が会話するシーン。
ゲン一佐はアメリカから供与された航空自衛隊の戦闘機に乗っており、その横から平の乗った零戦が現れる。
そして平は「では貴様はまだ戦争で飯を食っているんだな!」と喝破し、「俺は明日の平和を信じて命を捨てた。その死を犬死ににさせるつもりか」と畳みかけ、「戦争で儲け、戦争で食う日本人が1人でもいる限り 死んだ我々に平和はない!」とくる。
このストレートさもすごいのだが、この呼びかけにゲン一佐が「やめてくれ!」と反応するところが気になってしまう。この呼びかけが効くのはゲン一佐が旧軍人だったからなのではないか? ずっと、どこか後ろめたかったのではないか? と。
現代なら「俺だって明日の平和のためにこれに乗っているんだ!」と言い返すのではなかろうか?
ある考えには必ず別の考えがあり、最後は声のデカいほうが勝つという新しい戦前の時代で、こうも同じ前提を共有した話ができるのかなあ、と思った。
しかし、この反戦というメッセージのストレートさ、明確なポジション取りは、私にはなかなか難しい(ブログを書いているのもポジションを取る練習だったりする)ものなので、素直に感動したこともまた事実だ。
2つめは、平博士とサイボーグ009の対話シーン。
もちろんここは日本国憲法第9条や「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」とそこに差し込まれる戦闘機という演出もそうなのだが、「私の一人息子は戦争で死んだ。死者が生きて帰らぬ以上、生きているわしは何をなすべきか……これがわしの回答だ!」という時の迫力がものすごい。
初見で一番やられたのはここだった。
反戦というテーマで本気のアニメを作ると、こんなすごいものができるのか。と、ただただ圧倒された。本当に、すごいもの見ちゃったな。
旧サイボーグ009(1968年)第16話「太平洋の亡霊」 - 天のろくろ